隣の達磨坂をつついて言

 警察に拉致されそうだ。
 こういう時こそ 勇者に助けて欲しいのに、
 火梛は 興味深そうに 空走車を眺めているばかりで 役に立たない。
 と思っていたら、いきなり屋根に飛び乗った葵涌通渠

「そこ、乗るとこじゃないから」
 引き摺り下ろそうと 捕まえて引っ張るが、
 怪訝そうな顔をするばかりだ。

「ちょっと待った!  私も行く」
 そこに現われたのは 星来だった。
「あら、級長戸辺(しなとべ)君だったかしら、
 虚維の友達よね。 授業はいいの」
 私を拉致しようとしているくせに。

「近頃 ユンが危ない目に遭ってばかりいるから心配だ。
 私も行く」
 そうじゃなくて 止めて欲しい。
 しかし、空走車は大型だから、
 全員乗れてしまうところが、また口惜しかった。
 火梛も、なんとか屋根から降ろして 座席に納めたHIV Test

 今回は 退屈なくらい安全運転だった。
 前の座席に座った先生が、隣の達磨坂をつついて言った。
「ほらクリちゃん、謎の美青年よ」
 後には 私を真ん中に挟んで三人が座っている。
 振り返って、達磨坂は戸惑った顔をした。
「あれっ、女性だったんですか。 でも感じが違いますね」
 星来を見ている。
 しょうがないから、私が火梛の眼鏡と帽子を取ってやった。
「うおおおおぉぉ」
 嬉しそうに吠える孕婦按摩